行書で書き順が変わる漢字|草かんむり・耳へん・馬・書・成など楷書との筆順の違い

行書で書き順が変わる漢字|草かんむり・耳へん・馬・書・成など楷書との筆順の違い

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草かんむり・耳へん・「馬」「書」「成」──楷書と行書で筆順がちがう字の見分け方 | アジア篆芸 店長 | 最終更新:2026年10月19日

💡 3行でわかる行書の書き順

① 行書の筆順は楷書と同じ字がほとんど。変わるのは、点画をつなげて書くために順番を入れ替えたほうが自然な字です。
② 代表例は草かんむり(花・草・葉)。楷書は横画が先、行書は「ソ」を書いてから横画。ほかに耳へん(取)・馬・書・里・戈(成)・安・糸へんなど。
③ 行書のくずし方は一通りではないので、学校の書写は教科書の行書に合わせるのが基本です。

中学校の書写で行書を習い始めると、「お手本の書き順が、小学校で習ったのとちがう」と戸惑うことがあります。これは覚えまちがいではありません。行書には、楷書とは筆順が変わる字があるのです。
実際、書写の教科書の検定基準には「行書で筆順が異なる字については、適切な説明を加えていること」という項目があり、教科書でも説明することになっています。この記事では、行書で書き順が変わる代表的な字と、その理由、迷ったときの考え方をまとめました。

1. なぜ行書では書き順が変わるのか

行書は、楷書を少しくずして速く、なめらかに書くための書体です。楷書では一画ずつ筆を離して書きますが、行書では前の画の終わりから次の画の始まりへ、筆の流れ(筆脈)をつなげて書きます。

このとき、楷書の順番のままだと筆が大きく遠回りする字があります。そうした字では、近い画から順に書けるように筆順を入れ替えることで、点画が自然につながります。行書で筆順が変わるのは、ほとんどがこの理由です。

行書の主な特徴をまとめると、次の通りです。

行書の特徴 内容
点画の連続 画と画を線でつなげて書く
点画の省略 点や画の一部を省いて書く
点画の形の変化 払いが止めになる、線が曲線的になるなど
筆順の変化 つなげやすいように、書く順番が変わる

2. 行書で書き順が変わる漢字の例

書写教育の専門家(山梨大学名誉教授・宮澤鷲州氏)が月刊『書写書道』で解説している例を中心に、中学校の書写でよく出会う字をまとめました。楷書の筆順は、文部省(当時)の『筆順指導の手びき』にもとづく学校の筆順です。

字 楷書の筆順 行書で変わるところ
花・草・葉 草かんむりは横画 → 縦 → 縦(カタカナの「サ」の順) 「点 → 点 → 横」。左右の短い縦(「ソ」の形)を先に書き、横画は最後
取・職・聖 耳へんは横 → 縦 → 横 → 横 → 右上への払い → 右の縦画 右の縦画を3画目に書き、内側の横画と右上への払いはあと。払いがそのまま右側の部分へつながる
馬・駅 縦 → 横 → 縦 → 横 → 横 → 横折れ → 四つの点 縦 → 横 → 横 → 横 → 横折れ → 縦 → 四つの点。中の縦画をあとに回す(馬へんも同じ)
書 上の横画5本のあと、中央の縦画、下の「日」 横画をすべて書いてから、中央の縦画を最後に書く
里・重 中心の縦画を途中で書く 横画を先に書き、中心の縦画を最後に書いて次の字へ
成・感・戦 「戈」の部分は左払い → 点 点を先に書いてから左払い。左払いがそのまま次の字へ向かう
安 うかんむりは上の点が1画目 左の縦画が1画目になり、点は3画目に。ひらがなの「あ」はこの形から生まれた
紙・組・線 糸へんの下は「小」の形 下の部分を三つの点にして、左から順に書く。糸が字の下や単独のとき(係・素・系など)は変わらない
無 ノ → 横 → 横 → 縦4本 → 横 → 下の点 二本目の横画を長くする形(許容の形)で書くことがあり、そのときは筆順も変わる

※行書のくずし方は一通りではありません。同じ字でも、楷書と同じ筆順でくずす書き方もあれば、上の表のように順番を入れ替える書き方もあります。

3. いちばん出会う「草かんむり」

行書で筆順が変わる字として、もっともよく挙げられるのが草かんむりです。花・草・茶・葉・英・薬など、草かんむりの字はとても多いので、ここを押さえるだけで行書がぐっと書きやすくなります。

楷書:横画が1画目

学校で習う楷書の草かんむりは3画で、カタカナの「サ」と同じ横画 → 左の縦 → 右の縦の順です。「花の1画目は横画」というのは、大人でもまちがえやすいポイントです。

行書:「ソ」を書いてから横画

行書では、「点 → 点 → 横」、つまり左右の短い縦を先に書いて「ソ」のような形にし、最後に横画を引く書き方がよく使われます。草かんむりの字はとても多く、日常の行書でもこの書き方が多く使われます。右の点から横画の起筆へ筆を戻し、そのまま下の部分へ流れていけるため、筆の動きがなめらかになります。

なお草かんむりは、もともと「艸」という字から来た部首で、4画で書く形もあります。古典の書には複数の筆順が残っていて、明の文徴明のように同じ人が両方の筆順で書いている例もあります。

4. しめすへん・ころもへんは同じ形になる

「礼」「祝」のしめすへん(ネ)と、「初」「裕」のころもへん(衤)は、楷書では点が1つあるかないかで区別します。ところが行書では、点画をつなげて書くことで両方がほぼ同じ形になり、筆の運びも楷書どおりではなくなります。

行書を読むときは「へんの形だけで、しめすへんかころもへんかを決めない」、書くときは「お手本のつなぎ方をそのまま真似る」のがコツです。

5. 行書の筆順に迷ったときの考え方

  • まず楷書の筆順を確認する:行書の筆順の大半は楷書と同じです。楷書の順番を正しく知っていれば、どこが入れ替わったかに気づけます。
  • 学校の課題は教科書の行書に合わせる:行書には複数のくずし方があり、正解は一つではありません。テストや書き初めでは、教科書や先生のお手本が基準です。
  • 筆の流れが自然かで判断する:つながりの線(筆脈)が無理なく次の画へ向かっていれば、その順番は行書として自然です。
  • 楷書でも筆順が複数ある字がある:「必」「上」「馬」「無」などは、楷書でも昔から複数の筆順で書かれてきた字です。『筆順指導の手びき』は学校で教える順番を一つに決めたもので、ほかの筆順をまちがいとするものではありません。

6. 行書の書き順を身につける練習法

① 楷書の筆順をアニメで確認する

当店の行書・楷書の書き順アニメーションでは、調べたい字の楷書の筆順を一画ずつ再生し、毛筆の行書の字形と並べて見られます。まず楷書の順番を確かめ、行書でどの画がつながっているかを見比べてください。

※アニメーションの行書表示は、楷書の筆順を行書の字形に当てはめた目安です。この記事で紹介したような「行書で順番が入れ替わる字」は、本文の説明とあわせて確認してください。

② 行書のお手本をなぞる

習字のお手本メーカーで書体を「行書」にすると、好きな言葉の行書のお手本が作れます。「なぞり練習用」を印刷して下に敷けば、点画のつながりを手で覚えられます。

③ 行書に向いた筆で書く

行書は線をつなげて書くため、穂先がよくまとまり、弾力のある筆が向いています。半紙なら中筆、名前や手紙なら小筆を。選び方は書道筆の選び方で詳しく解説しています。

7. よくあるご質問

Q. 行書と楷書で書き順は違うのですか?

A. ほとんどの字は同じです。ただし、点画をつなげて書くために順番を入れ替える字があり、草かんむり(花・草など)、耳へん(取など)、「馬」「書」「里」「重」、「戈」をふくむ字(成・感など)、「安」、糸へんなどがよく例に挙げられます。

Q. 行書の草かんむりの書き順は?

A. 楷書では横画 → 左の縦 → 右の縦の順ですが、行書では左右の短い縦を先に書いて「ソ」の形にし、最後に横画を書く書き方がよく使われます。

Q. 行書の筆順は一つに決まっていますか?

A. 決まっていません。行書にはくずし方が何通りもあり、楷書と同じ順番でくずす書き方もあります。学校の書写では、教科書や先生のお手本の筆順に合わせてください。

Q. 漢字テストで行書の筆順を書いたら不正解ですか?

A. 漢字テストや筆順の問題は、ふつう楷書の筆順で答えます。行書の筆順は、行書で書くときの筆の運びとして覚えておきましょう。

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