石泉印泥とは?耘萍印泥・李耘萍監製の全系列と等級の選び方【対照表つき】

石泉印泥とは?耘萍印泥・李耘萍監製の全系列と等級の選び方【対照表つき】

Admin我的商店

石泉印泥と耘萍印泥は、同じものです。

中国では「耘萍印泥」、日本では「石泉印泥」。
呼び名が違うだけで、どちらも李耘萍が監製する同一ブランドです。
名称・系列・等級を、一枚の地図に整理しました。

こんにちは、渋谷の篆刻用品専門店「アジア篆芸(Asia Seal Art)」店長です。

石泉印泥を調べ始めると、多くの方が同じところでつまずきます。「石泉と耘萍は別のブランドなのか」「光明と美麗はどちらが上なのか」「中国のサイトで見た"牡丽"や"超箭"は、日本のどれに当たるのか」。この記事では、その対応関係を一度すべて表に落とします。

💡 先に結論

石泉印泥=耘萍印泥=李耘萍監製、すべて同一ブランドの別名です。等級は 光明 → 美麗 → 箭鏃 超箭 → 上品・精品・珍品・貢品 の順に上がります。はじめの一顆なら「光明」か「美麗」、提出作品に使うなら「箭鏃 超箭」。この3つを押さえれば、あとは応用です。

この記事の内容

  1. 石泉印泥とは──李耘萍と呉氏潜泉の技法
  2. なぜ名前が二つあるのか【中日名称対照表】
  3. 4つの系列の地図
  4. 等級の階段──どこまで必要か
  5. 色で選ぶ──朱砂・朱磦・彩色
  6. 【早見表】あなたが買うべき一顆
  7. よくあるご質問

1. 石泉印泥とは──李耘萍と呉氏潜泉の技法

石泉印泥は、上海の印泥製作者・李耘萍(り・うんぺい)が監製する印泥ブランドです。製造は上海耘萍工藝品有限公司。その技術的な土台にあるのが、呉氏潜泉印泥の製作技法です。

印泥は、朱砂(顔料)・艾(もぐさの繊維)・油の三つを練り合わせて作ります。配合そのものは単純に見えますが、朱砂の粒度、艾の処理、油の精製度と熟成期間──この組み合わせが、紙に押したときの厚み、被覆力、そして光の反射(折光)を決めます。石泉印泥が幅広い等級を持てるのは、この三要素を段階的に作り分けているからです。

日本で流通する主要な印泥ブランドのなかで、練習用から作品用・コレクター向けまで一つの系統で通して揃えられるのは、現状ほぼ石泉印泥だけです。最初の一顆から十年後の一顆まで、同じ系統の中で階段を上がれる。これがこのブランドの実用上の強みです。

2. なぜ名前が二つあるのか【中日名称対照表】

中国国内では「耘萍印泥」の名で流通していますが、日本では戦後から「石泉印泥」「上海石泉印泥」の名で定着しました。別ブランドではありません。同じものの、二つの呼び名です。

やっかいなのは、等級名まで日本で読み替えられている点です。中国のサイトや印譜で見た名前が、日本の販売店では別の字で並んでいる。この対応を知らないと、同じ品を二度買ってしまいます。

中国での名称 日本での名称
耘萍印泥 石泉印泥/上海石泉印泥
牡丽 美麗(牡麗)
超箭 箭鏃 超箭(せんぞく ちょうせん)
朱磦 朱磦/黄口(きぐち)
缶庐系列 缶廬(ふろ)系列
高式熊印泥(旧称) 伝承系列(2019年に改称)

⚠️ 「黄磦(こうひょう)」と「黄碥(こうへん)」は別の品種です。一字違いで紛らわしいのですが、黄磦は李耘萍監製の本格派、黄碥は朱磦色を模した練習用。価格も中身も異なります。ご注文の際はご確認ください。

3. 4つの系列の地図

石泉印泥は大きく4系列に分かれます。等級の話に入る前に、まずこの地図を頭に入れると迷いません。

① 耘萍石泉系列──中核となる基本ライン

光明・美麗・箭鏃 超箭・朱磦といった基本色から、清宮印泥を復刻した貢品・珍品・精品・上品、写経用の般若・経文まで。最も幅が広く、ほとんどの方はこの系列の中で選べば足ります。

② 宣和系列──方節庵「節庵印泥」の復刻

李耘萍・田旭峰の母子が共同で研究し、2011年に発表した復刻型。1945年に宣和印社が刊行した『古今名人印譜』を印色の参照母本としています。鉱区で採掘された鏡面朱砂を精細に研磨し、被覆力・細やかさ・厚みを同時に立てた一顆。近距離での鑑賞に耐えます。

③ 缶廬系列──呉昌碩「美麗紅印泥」の復刻

呉昌碩が生前に用いた「美麗紅印泥」を復刻対象としたシリーズ。呉氏潜泉の製作技法を母体とし、印色が沈着して長く褪せません。石泉の一般品より湿度が高く、紙面により厚い視覚効果が出るため、写意系の篆刻や設色の濃い国画と相性が良い系列です。珍品・精品・上品の3等級。

④ 伝承系列──魯庵印泥の系譜

高式熊が手写した魯庵印泥の第47号〜第49号の配合をもとに調製された系列。1993年に「高式熊印泥」として世に出て、2019年に「耘萍伝承印泥」へ改称されました。全体に橙みを帯び、乾湿の程度が中庸で、書画用紙と篆刻用紙の両方に対応します。珍品・精品・上品の3等級。

4. 等級の階段──どこまで必要か

日本の販売店は、ブランドよりも等級名で棚を切ります。光明 → 美麗 → 箭鏃、と価格が上がる。この階段は各社共通です。

入門・練習用 光明・桜・古色・黄碥。扱いやすさを優先した配合。日々の稽古と習作に
中級・実用 美麗(牡麗)・箭鏃 超箭・朱磦。提出作品、展覧会出品に
上級・作品用 漂浄・貢品・珍品・精品・上品。折光に優れ、印屏・印譜の制作と近距離鑑賞に
写経用 般若・経文。寺院での押印需要に合わせ、写経用紙との相性を重視

清宮印泥を復刻した4等級については、順序を誤解されがちなので補足します。貢品・珍品が朱磦色、精品・上品が朱砂色という色の別があり、単純な優劣の一列ではありません。

貢品 朱磦色。橘紅で発色が鮮明。被覆力・折光ともに優れ、印屏や展示向き
珍品 朱磦色。貢品より赤寄りで、朱砂色の趣を多く残す。工穏印・工筆画と好相性
精品 朱砂色。正紅に近く、沈着で温厚。折光が良く、最も用途が広い
上品 朱砂色。橘紅寄りで朱磦の韻味を併せ持つ。湿度・硬度ともに中庸で扱いやすい

5. 色で選ぶ──朱砂・朱磦・彩色

等級とは別の軸として、色の系統があります。同じ等級でも朱砂と朱磦の二種が用意されている品種があるのは、このためです。

朱砂系(正紅寄り) 光明・美麗・箭鏃 超箭・精品・上品。落ち着いた赤。書・国画の落款に幅広く使えます
朱磦系(黄口) 朱磦・黄磦・貢品・珍品。橙みを帯びた朱。細朱文や工筆画との相性に優れます
彩色系 古色。朱砂を含まず、落ち着いた朱古色。児童の書画教室や版画に

6. 【早見表】あなたが買うべき一顆

はじめての一顆 光明(朱砂系・正紅寄り)
国画・書道の落款に常用したい 美麗(牡麗)
提出作品・展覧会に使う 箭鏃 超箭
細朱文・工筆画に合わせたい 朱磦、または珍品
印屏・原拓印譜を作る 漂浄、貢品、または精品
写経・寺院での押印 般若(練習用)、経文(本番用)
写意系の篆刻・設色の濃い国画 缶廬系列
子どもの書画教室・版画に 古色、または桜

石泉印泥をご覧になる

7. よくあるご質問

Q. 石泉印泥と耘萍印泥、どちらを買えばいいですか?

同じものですので、どちらでも構いません。中国国内では「耘萍」、日本では「石泉」の表記が一般的です。当店では両方を併記しています。

Q. 光明と美麗は、どちらが上位ですか?

価格帯としては美麗が上です。ただし両者は同格の入門〜中級品で、色の性格が違います。光明は正紅に近く控えめ、美麗は深紅でやや紫みを帯び、「凝重」「沈着」の視覚効果を狙った色です。厚手で粗めの書画紙(熟宣・麻紙・カード紙)には美麗、生宣や麻紙で小写意の印風に合わせるなら光明、という選び方になります。

Q. 一両装(30g)はどれくらい使えますか?

個人が作品制作に使う場合、数年から10年程度です。減るというより、乾燥や油分の分離のほうが先に問題になります。定期的な練り返しのほうが大切です。

Q. 印泥と朱肉は違うものですか?

別物です。印泥は顔料を油で練った泥状の素材で、印影が盛り上がり、経年でも色あせません。朱肉はスポンジや布に染料を含ませたもので、速乾性に優れる代わりに時間とともに退色します。作品用には印泥をお使いください。

Q. 中国のサイトで見た品種が、日本の店にありません。

名称が読み替えられている可能性があります。上の対照表をご確認ください。それでも見つからない場合は、日本に輸入されていない品種かもしれません。お探しのものがあればお問い合わせください。

適切に扱えば、印泥は10年以上お使いいただける道具です。最初の一顆は、迷いすぎずに始めてみてください。使ううちに、自分の紙と印風に何が合うかが分かってきます。

あわせて読みたい

アジア篆芸は、東京都渋谷区を拠点に、篆刻印材・印刀・印泥と書道用品をお届けする専門店です。
📍 東京都渋谷区渋谷2-19-15 宮益坂ビルディング609

コメントを残す 0 件のコメント